このページではハングルの生みの親である朝鮮王朝4代王の世宗(セジョン)について解説します。
ハングル文字の生みの親である4代王・世宗(セジョン)は歴代の王様の中でも最も尊敬されている王です。
王のおくり名ですが、多大なる功績者に贈られる「祖」ではなく、「宗」なんですね。
ですが民衆からは非常に尊敬されており、「世宗大王(セジョンデウォン)」と呼ばれることもあります。
ソウルに銅像も建てられています。
世宗はどんな王様だったか
4代王・世宗(セジョン、세종)は強引な手腕を発揮した先王、太宗(テジョン)の三男でした。
姓は李、名は裪(裪は衣へんに陶のつくり)裪は「ド(도)」と読むので世宗の本名は「イ・ド(이도)」となります。
参考記事:朝鮮王朝歴代王系図と聖君ランキング
長男である兄の譲寧大君(ヤンニョンテグン)は武芸に優れ、後継者と目されていましたが、傍若無人な振る舞いをしていたといいます。
また、父である先王の太宗(テジョン)の強引な政治手法に疑問を持っていたので父や兄とは違うやり方を目指した、とされています。
こういったいきさつが「聖君」と称される優しい政治につながったんですね。
4代王・世宗(セジョン)は即位後も先王が軍事権を手放さなかったり、人事に口をはさんだりなど、当初は苦労が多かったのです。
さらに、義理の父(妻の父)を先王に殺される、という悲劇にもあっています。
これは先王が、外戚が力を持つことで王権が脅かされないように、という親心でやったこととされていますが、つらい経験だったことでしょう。
読書家であった4代王・世宗(セジョン)は儒教を広め、農業、地理、数学などの文化を発展させ、財政や交通なども整備しました。
ハングルの開発だけでなく、文化全体を底上げしました。
また、最も民を愛した王とも言われています。
この時代には「天才科学者」と言われるチャン・ヨンシルという人物がいました。
チャン・ヨンシルは世界初の測雨器を開発して降雨量を計測し、日時計も開発しました。
測雨器、日時計は世宗の銅像と同じ広場に展示されています。
旅行に行った際にはぜひ立ち寄ってみてください。
彼の存在も、この時期の発展に貢献しています。
このチャン・ヨンシルを主人公とした時代劇もありますよ。
世宗はハングルの生みの親
4代王・世宗(セジョン)の最大の功績とされるハングルの開発について。
当初は訓民生音(フンミンジョンウム、훈민정음)と呼ばれていました。
「ハングル、한글」という呼び方が正式になるのは1900年代になってからです。
한(ハン)は「偉大なる」、글(グル)は「文字」という意味で「偉大なる文字」という呼び名です。
このように呼ばれるハングルですが、分かりやすくて覚えやすいシンプルなつくりの文字です。
世宗のおかげでこのサイトも存在するんだな~
当時は盟主国として明(中国)が上にいる状態でした。
明の文字である漢字が正式な文字で、日常的な私的な文書に限ってハングルが使われていました。
また、明からすれば属国である朝鮮が独自の文字を持つことは不愉快なことであったのでしょう。
さらに、朝鮮の国内では両班(ヤンバン)など国の上層部しか字の読み書きができず、字を知らない国民を容易に支配できるという状態でした。
世宗はこうした状況を変えようと国民にも読み書きができる文字を作ろうとしたのですが、上層部は自分たちの立場を守るためにハングルの創設に猛反対します。
こういった背景から、4代王・世宗(セジョン)は当時はあまり評価を受けておらず、後世になってから功績が評価されています。
ハングルの開発という多大なる功績があるにもかかわらず、おくり名が「祖」ではなく「宗」なのはこのようないきさつがあるんですね。
世宗が「世宗大王」と特別な呼び方がされるのはいかに民衆から愛されたかを物語っています。
世宗の系図
世宗の系図を紹介します。
世宗は子供が多い王で、なんと22人。
朝鮮王朝の27人の国王の中で、四番目に子供が多い王でした。
「王としての務め」は存分に果たしたわけです。
世宗の息子たちの話は次の次の項で解説してるよ
下の系図ではそのすべてを書ききれないので代表的な(王となった)2人だけを載せています。
世宗の側室はトンイ並みの大出世。賤民から側室の最高位の嬪(ピン)へ上り詰めた
世宗は子沢山でしたが側室も多い王でした。
その中でも特筆すべきは慎嬪金氏(シンビンキムシ)紹介します。
側室としては最も多い6男2女を産み、賤民から側室の最高位の嬪(ピン)へ上り詰めたシンデレラガールです。
トンイと並び、賤民から側室の最高位の嬪(ピン)へ上り詰めた数少ない女性です。
「世宗時代のトンイ」とも呼ばれています。
参考記事:朝鮮王朝の側室の階級とは。トンイはどの階級だった?
なのにトンイと比べて慎嬪金氏はまるっきりの無名ですね・・・
韓国時代劇の「大王世宗」では少しだけ登場するのですが、キャスト女優が健康状態悪化で降板したため無名のまま、とか。
トンイにはチャン・オクチョンという朝鮮三大悪女の一人であるライバルがいたためにドラマティックに描きやすかったが、慎嬪金氏にはそういった存在がいない、とか。
いつの日か、慎嬪金氏を主人公とした韓国時代劇が登場することを楽しみにしています。
世宗の息子はスヤンテグン。息子の悪行を知ったら世宗はどう思うか?
世宗の次の王は文宗(ムンジョン)は世宗の長男でしたが、世宗にはもう一人男児がいて、その名を首陽大君(スヤンテグン)といいます。
この首陽大君(スヤンテグン)が王座を狙い、権力争いをしますが、文宗(ムンジョン)の死後は文宗(ムンジョン)の幼い息子である端宗(タンジョン)が第6代の王として即位します。
端宗(タンジョン)はわずか11歳で即位しますが、即位当初から傀儡の王であり、叔父の首陽大君(スヤンテグン)に命を狙われていました。
端宗(タンジョン)は在位期間3年ほどで王座から降ろされ、庶民に格下げされたのち、毒を飲まされてわずか16歳でこの世を去ります。
これらは全て叔父である首陽大君(スヤンテグン)の仕業です。
世宗の次男である首陽大君(スヤンテグン)はこうして幼い甥っ子を死に追いやり、第7代の王・世祖(セジョ)として即位します。
参考記事:首陽大君(スヤンテグン)はどんな王様?経歴と死因などの解説
最高の聖君として慕われた世宗でしたが息子の悪行を知ったらどう思うのでしょうか?
世宗のまとめ
朝鮮歴代王の中で最も尊敬される聖君の世宗について解説しました。
世宗はハングルの生みの親、側室にトンイ並みのシンデレラガールがいる、息子のスヤンテグンの悪行、などをお伝えしました。
4代王・世宗(セジョン)が登場する時代劇は
- 大王世宗
- 根の深い木
- チャン・ヨンシル
などです。
大王世宗、根の深い木はそれぞれ同じ時代を描いていますが、切り口が違うので見比べてみてもいいでしょう。
チャン・ヨンシルは先に書いた科学者が主人公の作品です。
世宗の時代に朝鮮は文化的に大きく花開きますが、この後はしばらく低迷の時期が続きます。
朝鮮王朝で最も尊敬されている名君、4代王・世宗(セジョン)について解説しました。
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